シリンドリカルレンズは、その名の通り円筒状のレンズです。球面レンズが球体の一部を切り取った形状であるのに対し、シリンドリカルレンズは円筒(円柱)の一部を切り取った形状をしています。レンズ面の一方向は曲率を持ちますが、交差する一方向は曲率を持ちません。この特殊な形状により、入射した光が一点に集光する球面レンズと違い、直線状に集光する特徴があります。
シリンドリカルレンズの活用用途
一方向のみ曲率を持つ特徴から、映像のアスペクト変換に応用可能でワイドスクリーン映像を撮影するシネマ用カメラレンズなどにも用いられます(アナモルフィックレンズ)。またレーザー加工や光通信などの分野において、レーザービームの形状を整形するためにも使用されます。
シリンドリカルレンズの重要なスペック
シリンドリカルレンズのスペックには、母線ズレ精度という要素があります。これは、球面レンズにおける偏芯に相当するものですが、球面レンズと異なり、レンズの中心原点がライン状に存在するため、精度を出すことが難しくなっています。母線ズレには、シフトズレ、チルトズレ、そしてZ方向の傾きがあります。これらは、レンズのアライメントを行う際にはよく考慮する必要があります。
夏目光学のシリンドリカルレンズ
半導体露光装置、レーザー加工機や、画像アスペクト比変換など多彩な分野で数多く使われています。UV露光用高精度レンズからリーズナブルなビームコリメーション用レンズまでご希望に応じて対応します。また小径ロッドレンズ(円柱形)のほか、シリンドリカル面+球面、シリンドリカル面+プリズムを1つの素子に組み合わせた複合形状も対応可能です。
レーザ用途 | 撮像用途 | ||||
アプリケーション | ホモジナイザー 均一照明光学系 |
均一ラインビーム 成形 |
ビームコリメーション レーザ成形、 SAC |
ラインビーム 成形 |
アナモルフィック光学系シネマスコープ用 |
レンズ名称 | 長尺・大型 シリンドリカルレンズ |
小径 シリンドリカルレンズ |
ロッドレンズ | 丸型・異形 シリンドリカルレンズ |
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サイズ(mm) | 1 – 450mm | 最小径:0.4mm 最大長:200mm |
1 – 150mm | ||
材質 | 一般光学ガラス、合成石英、低熱膨張ガラス、Si、CaF₂ | ||||
曲率半径範囲 | 凹(Cc):1.4 – 10,000mm 凸(Cx):0.3 – 10,000mm |
— | 凹(Cc) 1.4 – 10,000mm 凸(Cx) 0.3 – 10,000mm |
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曲率半径公差 | < 0.5% | < 0.5% | < 0.5% | 直径公差 ±0.01mm |
< 0.1mm |
面精度 | 標準(断面解析) 50mm以下:PV≦λ/2 50 – 100mm:PV≦λ 100 – 150mm:PV≦2λ 高精度(全面解析) 100mm以下:PVr≦λ/10 100 – 150mm:PVr≦λ/4 |
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表面粗さ | < RMS 1nm | < RMS 1nm | < RMS 5nm | < RMS 5nm | < RMS 1.5nm |
偏芯(母線ズレ量) | 標準:±0.05mm 高精度:±0.01mm |
±0.01mm | |||
外観精度(S/D) | ISO10110-7/MIL-0-13830に対応可能 | ||||
その他 | 精密平面研削版により、シャープエッジ加工可能 (チッピング20μ以下) |
スティッチング計測により、大口径レンズの全面面精度解析及び、高精度修正加工が可能 | 試作1個から量産まで対応可能 | 試作1個から量産まで対応可能 | 精密偏芯接合による、ダブレット・トリプレット対応可能 |