ISO 10110(光学製図国際規格)
ISO 10110は、光学素子や光学システムの図面における特性・公差の表記方法を定めた国際規格です。光学部品は、機械部品と異なり「表面品質」「材料均質性」「波面精度」など特殊な要求があり、これらを図面に明確に指示するためにISO 10110が使われます。
なぜ必要?
機械図面では寸法や形状は表せても、光学性能に直結する「屈折率」「表面欠陥」「波面精度」などは表せません。ISO 10110は、これらを統一的な記号で表記することで、設計・製造・検査の共通言語を提供します。
主な部と記号例
Part 2:材料欠陥(応力複屈折)
材料内部の応力による複屈折を許容値で指定します。
記号例: 2/0.010 → 複屈折量 0.010 mm/m 以下
Part 5:表面形状公差
表面の形状精度をPV値(ピーク・トゥ・バレー)で指定します。
記号例: 5/0.2 → 表面形状誤差 0.2 mm 以下
Part 7:表面欠陥
ISOではスクラッチ・ディグの代わりに数値で指定します。
記号例: 7/10-5 → 最大欠陥サイズ 10 μm、最大個数 5
Part 9:コーティング
コーティングの種類や性能を記号で指示します。
記号例: 9/AR@550nm → 550 nmで反射防止膜
Part 14:波面形状公差
光学性能に直結する波面精度をλ単位で指定します。
記号例: 14/λ/10 → 波面誤差 λ/10 以下
表記方法の特徴
ISO 10110では、図面の光学データを「表形式」でまとめることが推奨されています(旧Part 10の形式)。これにより、寸法、公差、材料特性、表面品質を一目で確認できます。