MIL-PRF-13830Bは、米国国防総省が制定した軍用規格(Military Performance Specification)の一つで、主に光学部品の表面品質(Surface Quality)を評価するための基準です。レンズやプリズム、ミラーといった光学部品の表面に存在するキズ(Scratch)やブツ(Dig)といった欠陥の許容範囲を定義しています。
この規格は、特に軍事用途の高精度な光学機器、例えば火器管制装置や照準器などに使用される高性能な光学部品の品質を確保するために制定されました。しかし、その厳格な基準から、民生用の高品質な光学製品の製造においても業界標準として広く採用されています。
表面品質の分類:キズとブツ
MIL-PRF-13830Bでは、光学部品の表面欠陥を主に「キズ」と「ブツ」の2種類に分類し、それぞれ異なる方法で評価します。
- キズ(Scratch):
- 定義: 光学部品の表面に存在する線状の欠陥を指します。
- 評価方法: 規格では、キズの「明るさ」や「目立ちやすさ」に基づいて評価されます。これは、実際のキズの長さや幅を直接測定するのではなく、特定の**「キズ見本(Scratch Sample)」**と比較し、その見本と同じか、それよりも目立つキズを識別することによって行われます。
- 評価尺度: キズの等級は、数字10から80までの5段階(10, 20, 40, 60, 80)で表され、数字が大きいほどキズが明るく目立つことを意味します。例えば、「60/40」といった表記の場合、最初の「60」がキズの等級を示します。
- ブツ(Dig):
- 定義: 光学部品の表面に存在する、欠けや穴、気泡、異物といった点状の欠陥を指します。
- 評価方法: ブツは、その最大直径に基づいて評価されます。
- 評価尺度: 直径を0.01mm単位で表します。例えば、「60/40」といった表記の場合、2番目の「40」がブツの等級を示し、これは直径が0.4mmまでのブツが許容されることを意味します。
検査方法
MIL-PRF-13830Bに準拠した検査は、通常、特定の照明条件下での目視検査によって行われます。一般的には、40Wの白熱ランプまたは15Wの昼光色蛍光ランプを使用し、暗い背景や曇りガラス越しに部品を観察することで、欠陥の有無や程度を確認します。