サファイアは、酸化アルミニウム(Al2O3)としても知られる鉱物コランダムの一種で、赤色以外の色を呈するものを指します。宝石としては、青色や黄色、ピンクなどの美しい色彩や高い硬度が魅力ですが、宝石以外にもさまざまな分野で工業材料として利用されています。
工業材料としてのサファイアの特徴は、以下のようなものがあります。
- 硬度が高く、耐摩耗性や耐熱性が優れている。
- 絶縁性が高く、電気的特性や誘電特性が安定している。
- 光学特性が高く、赤外線から近紫外線までの広い波長域で透過性が高い。
- 熱伝導率が高く、低温域でも優れた熱伝導性を持つ。
これらの特徴を活かして、サファイアは以下のような用途に使われています。
- 腕時計の風防やカメラレンズの保護などの耐衝撃や耐傷性に優れた部品。
- 半導体基板やマイクロ波導入管などの電子部品や通信機器。
- 真空機器や反応炉の窓などの光学部品やセンサー。
- 重力波望遠鏡などの精密測定機器や科学実験装置。
サファイアは自然界に産出するものだけでなく、人工的に合成することも可能です。人工サファイアは、高温高圧下で酸化アルミニウムを結晶化させる方法や、溶融した酸化アルミニウムを冷却しながら結晶化させる方法などで作られます。人工サファイアは、自然サファイアと同じ化学組成や結晶構造を持ち、物理的・光学的・電気的特性もほぼ同じです。人工サファイアは、自然サファイアよりも安価に大量に生産できるため、工業材料として広く利用されています。