カセグレン光学系は、反射望遠鏡の一種で、主鏡と副鏡の組み合わせによって長い焦点距離を持ちながらもコンパクトな構造を実現した光学系です。カセグレン光学系は17世紀にフランスのローラン・カセグレンによって考案されましたが、その後様々な派生型が開発されています。例えば、主鏡と副鏡に双曲面を用いて収差を高度に除去したリッチー・クレチアン式や、主鏡にシュミット補正板やメニスクレンズを入れて反射屈折望遠鏡としたシュミットカセグレン式やマクストフカセグレン式などがあります。これらの光学系は天体望遠鏡だけでなく、工業用の外観検査や医療用の内視鏡などにも応用されています。
カセグレン光学系の特徴は、主鏡の中央に開口部を設けて副鏡からの反射光を取り出すことで、光軸上に観測装置を配置できることです。これにより、ニュートン式望遠鏡のように光軸を横切る平面鏡や接眼レンズを必要とせず、光学系の対称性や剛性を保ちやすくなります。また、副鏡が凸面であるため、望遠鏡としての焦点距離は主鏡の焦点距離の3-4倍になります。これは高い空間分解能や倍率を得ることができるという利点があります。さらに、カセグレン光学系は主鏡と副鏡の間隔を調整することで焦点位置を変えることができるため、焦点調整が容易です。
カセグレン光学系は反射望遠鏡の中でも優れた性能と多様性を持つ光学系です。しかし、それゆえに製作や調整には高度な技術や知識が必要です。また、副鏡が主鏡の一部を遮蔽するため、有効開口比が低下し、明るさや視野角が制限されるという欠点もあります。カセグレン光学系はその長所と短所を理解し、目的や条件に応じて最適な方式を選択することが重要です。